2012年9月2日日曜日

なぜに医療の情報化が進まないか?


 とあるお役所の人と、「なぜに医療の情報化が進まないか?」という議題を検討する場があったので、その中での話をまとめてみる。だって、外は雨なので。

レセプト請求の電子化の遅れ
 医療ITが日本は後進国になりつつあります。お隣の韓国では医療請求はほぼ完全オンライン化されており、日本がやはり遅れているという状況にあります。この遅れの理由として、やはり計算の単純さがあるわけで、韓国の医療請求はほぼ足し算と引き算だけで構成されているということ。
 日本では長年、医師会と厚生労働省との綱引きの中で、医療改定が行われており、〇〇%減算とかが当たり前になっています。割り算があると、「足し算」と「割り算」の順番が変わることで計算結果が変わるのですから、計算順序まで法定化しないと行けなくなる訳です。実際にはそこまで法定化されていないため、医科点数表の解釈がどんどんと分厚くなってしまうという現実があるわけです。高額療養費の高所得者の「総医療費の1%」なんていうのも、「適正な負担」と「莫大な医療事務の現場のコスト」が見合っているのか疑問に思います。(しかし、難しい計算があればあるほど、医療事務という雇用が守られ、ニチイやユーキャンなどの医療事務学習の産業が存続しているという現実もありますが。。。)

診療情報の情報化の遅れ
 医療請求に関する情報化でも日本は遅れていますが、診療の情報化(EHR)も負けず劣らず普及していません。電子カルテを日本で導入してみると、医療情報課の担当者さんが電子カルテベンダーに文句を言います。「電子カルテにしたのに、役立つ情報がとれない」。実はこれ、電子カルテが悪い訳ではなくって、「医師のカルテの書き方が今まで全く標準化されていなかった」ということが、電子カルテを使ってみて初めて分かったということ。
 例えば、同じ血圧でも「血圧(上)」、「収縮期血圧」、「最高血圧」と、医師や病院によってデータを1元的に取り扱うかどうかが違ってきます。そこが診療の情報化を進めるにあたり、非常に難しいところになっている。現在「オントロジー工学」や「セマンティックWEB技術」を使った文章解析技術で解決を図ることが進められていますが、その前に医大の履修科目に「カルテの書き方」を必須項目とすると、診療情報の二次利用が大きく進むはずです。
 今の日本におけるカルテというのは、「診療報酬で査定されないためのカルテ」になりがちです。本来の「診療を良くするためのカルテ」を普及するためには、カルテ記載の定型化、及び標準化が重要になるでしょう。

国民背番号制導入の必要性
 診療を情報化する上で最重要なのが国民背番号制の導入です。医療機関で診療情報をしっかり分析したところで、その診療によってどうなかったかという結果の情報が得られません。人間死ぬ時が病院の中だけではありません。何時、何処で、どのように死んだかが分かるためには、死亡を取り扱う住基ネットとの連携が必要となります。
 現在、マイナンバー制度が国会審議されており、法案成立は全く見えてこない状況です。しかし、このマイナンバー制度は、総務省の管轄であり、厚生労働省が進める保険証番号との連携がされない見込みです(霞ヶ関の縄張り争いが見え隠れします)。マイナンバー制度を総務省と厚生労働省が一体となって進めて、レセプト請求データと住基ネットを早期に統合されないと、EBM(エビデンスに基づく医療)の実現は難しいと言えます。(医師会団体が国民背番号制度に反対しているという事実は非常に興味深い。。。そんなに税金がry...)

2012年8月17日金曜日

JavaからJNI経由で共有メモリ for Win

javaからJNIで共有メモリを弄りたい。
そんな、ひと夏の衝動にかられて、JNIで共有メモリをアクセスしてみました。
https://github.com/tkymism/sharedmem

今回も流れるインタフェースを駆使して、こんな感じのインタフェースにしてみた訳です。



使い方
(1)VisualStudioでdll生成

  •   構成プロパティ➡C/C++-➡全般➡追加のインクルードディレクトリ
    • [jdk_dir]\include;
    • [jdk_dir]\include\win32;
    • [git_dir]\sharedmem\sharedmem-win\include
  •   構成プロパティ➡C/C++➡コード生成➡ランタイムライブラリ
    • マルチスレッド (/MT)
  •  構成プロパティ➡リンカー➡全般➡追加のライブラリディレクトリ
    • [jdk_dir]\lib;
  •  構成プロパティ➡リンカー➡入力➡追加の依存ファイル
    • jvm.lib;

(2)maven installでjar生成


解説
"hogehoge"という名前で共有メモリに書き込んでいます。0~99byteはヘッダーとして使用して、100byte目以降を実態のファイルとしてallocateする図です。
locateでは0~99byte目にアクセスしてByteBuffer(Direct)で共有メモリに直接attachします。 100byte目以降(locate)にもdataを突っ込んで、そしてreleaseする訳です。
やはり、共有メモリに対してアクセスするためには排他制御が必要です。今回は読み込みと書き込み両方でMutexを使って排他制御を行っています。
このプログラムではMutexの名前には"<共有メモリ名>+.lock"で生成します。
SharedMemoryRepository#readonly(String name)排他する
SharedMemoryRepository#writable(String name)排他する
SharedMemoryRepository#copy(String name)排他しない
WindowsAPIのOpenFileMappingとMapViewOfFileでは読み込みモードが一緒じゃないとアクセス権でエラーが出ました。なので、以下のようにopenした段階でモードを決定してmappingのモードと同じになるようにしています。 ByteBufferは非常に便利なんですが、共有メモリにjavaのObjectをserializedしたbyte配列を格納したいと思い立ったため、こんなインタフェースも追加してみました。

課題
NativeAPIを触るとやはりallocateの煩わしさにいらだちます。allocateする際にbyte列を指定するのですが、CreateFileMapping関数ではサイズを64bitで指定できるのですが、32bitづつ分けて設定してくれという大胆な関数でした。 そんな変態的な仕様に対して、javaからはlong(8byte)をint(4byte)に分割して状態でJNIに引き渡すようにしてみた訳ですが、本当に正しいかが疑問に残ります。 ほかにも色々課題はあるのですが、とりあえずこれでcommit.

共有メモリを使う動機
私の部署で開発しているパッケージは基本的にjava(Swing)で開発している訳ですが、既存製品から移行し続ける経緯もあり、未だに帳票処理やバッチ処理ではCOBOLで開発しています。旧モデルの保守性を考えると、ビジネスロジック(COBOL)の資産がそのまま残ってしまったということです。
さて、javaからCOBOLを呼び出す際にはJava->JNI(C)->COBOLという破廉恥な連携が行われている訳ですが、たまにヘタクソなコボラーさんが、添字エラーを起こしちゃうようなプログラムを作っちゃうと、javaごとプロセスが死んでしまうという大惨事が引き起こされます。
なので、COBOLの処理をなんとかして別プロセスで動作させたいという動機が生まれた訳です。
でも、javaで抱えるメモリは共有したい!ということで、Google App EngineなんかであるようなMemcacheを、Windowsの共有メモリを使って実現したいということになったわけです。

2012年8月13日月曜日

JNIでヒープ外を参照


JNIを使ってヒープ外のメモリにアクセスしていたわけで。そしたら、実装方法により性能が全然違ったのでメモ。



ByteBufferでアクセス

ByteBufferクラスを使ってアクセスするのが最高性能が出ました。以下に実装例を記載。
Java
C++(MSVC)

byte[]でアクセス

ByteBufferより倍の性能かかった実装例で、byte[]を引き渡す方式。C側でJavaの配列操作をするのに時間がかかるようです。
Java
C++(MSVC)



1 byteずつアクセス

最初はbyte数分、Java側でループを行って1byteずつ参照する方式。JNIのオーバヘッドが大きいようで、ByteBufferクラスに比べ100倍以上の時間がかかっていた。
Java
C++(MSVC)

2012年8月11日土曜日

Java外部起動

最近、Windowsの共有メモリ(BaseNamedObjects)をJavaでアクセスするプログラムを書いているのだけど、そうすると別プロセスの起動をJUnitで書きたくなる訳で。
Javaの別プロセスを起動する場合にこんな感じで書けたら良いなと思いながら書いたものをgithubに公開してみる、そんな夕下がり。
https://github.com/tkymism/java-launch

ここでのポイントは標準出力を親プロセスに引き渡すJavaMainクラス。(参考:ひしだま's 技術メモページ)
インタフェースは流してみる。
Linuxは現在、未対応でMacとWindowsで動作確認済。
標準出力で文字コードを正しく読み取るためには親プロセスと子プロセスで文字コードを合わせる必要があるようです。


2012年7月8日日曜日

生レバー、最小不幸社会、オーバー・コンプライアンス


嗚呼、生レバー
 生レバーがとうとう禁止となりました。私としては焼いたレバーはモソモソとした食感があまり好きではなく、生レバーの方が食べやすいと思っていた生レバー推進はだったので、今回の厚生労働省のオーバー・コンプライアンスに基づいた法令制定にはデモを主催してやろうかと考えていた次第です。時を同じくして、カリフォルニア州においても、フォアグラが禁止になっています。こちらはガチョウや鴨に対して強制的に餌を与えて太らせるという飼育方法が虐待だということです。世界の贅肉の3分の1を抱え込む米国でこのような法案が可決されるのは、非常な皮肉な結果かと。

最小不幸社会
 さて、日本の生レバーが禁止される経緯において、ブラウン管越しでも衝撃的にまで「痛さ」を感じさせ、お茶の間を震撼させた、某焼き肉屋社長の功績が大きいのかと。いくらデフレでも300円のユッケをメニューにしたらいかんやろ、と。しかし、このような特定の失敗事例に基づいて、この日本では逐次新たな規制(コンプライアンス)というものが設けられていきます。目指す社会は、どんな経営者や消費者でも、限りなくノーリスクで焼き肉を供給・消費出来るあり得ない社会なのでしょう。ですが、このオーバー・コンプライアンスにより、焼き肉という生肉をも美味しく頂くクリエーティブな生業が死んだことになります。このようなオーバー・コンプライアンスは、最近の日本電機企業がグローバルでの凋落している状況を生んでいるという話もあります。「過剰品質」、「PL法」、「個人情報保護法」等など。いつぞやの首相が目指した「最小不幸社会」というノーリスク社会。

日本のソフトウェアはレシピ作り
 日本でソフトウェアを開発するにあたり、徹底した品質管理の元に開発されています。これら旧来の品質管理では、不具合(バグ)がないよう、ソースコードよりも多くのドキュメント(設計書、テスト仕様書)が生成されます。例えば、正しい設計であるか品質測定するために、「レビュー指摘件数を〇〇件以上」という指標を与えられてプロジェクトが進みます。すると、設計書のレビューで「句読点がない」やら「ここに改行が必要」とか、ドキュメントに対するほぼなんの価値もないレビュー指摘が列挙されます。そして「レビュー指摘件数が〇〇件以上あるから、品質が保たれた」ということが当たり前のように行われている。「アホ」かと。レストランのメニュー開発で、ただひたすらレシピをレビューして、失敗するリスクがほとんどないメニュー開発してるということです。

オーバー・コンプライアンスの罠
 日本の大手IT企業に勤めているエンジニアで、ソースコードを見ないで仕事をしている人が約8割程度ではないかと。その状況でレシピ作りだけに勤しんでいても、Dropboxは生まれないんじゃないかと気づかないといけないと思うのです。日本から正しいソフトウェアでパッケージングされたヒット商品が出てこない理由は、ノーリスクでソフトウェアを開発しようっていう「最小バグ開発」が原因ではないかと(ちゃんとリスクを取って、バグが少ないのは良いことですけど)。クリエイティブにはやはりリスクを取ることが必須であると思う訳で。
 さて、この理屈で言うと、某焼き肉屋社長はクリエイティブということになります。しかし、クリエイティブな作業にはもう一つ重要なことがあります。まさに「間抜けを無力化する-Joel on Software」。能力って平等じゃないっていう事実を踏まえ、プロジェクトはマネジメントしなくてはいけないという教訓かと。

2012年5月6日日曜日

プログラミングの3ワード


未来へのお手紙
 以前、プロジェクトメンバーに「君が今書いているソースコードは君ではない誰かが修正することに間違いなくなる。その未来の仲間に手紙を書いているようなもんなんだから、ちゃんと分かりやすく書いてあげるようにしなさいよ。バグ修正する時に君も悲惨なプログラムをなんぼも見たやろ!」というような話をプロジェクトのメンバーに言いました。そんな話をしたら、「そうですね〜」と、そのメンバーは言ってくれてました。長髪ではないが金八先生並みの熱い指導力を持っていたことでしょう。
 1年以上経ったこの前、そのメンバーがソース書いているところを横目で見てたんですが、まー悲惨に読みにくいこと。なんの成長も感じられない。どんだけ、金八的に熱く語ろうが、「読みやすく」書くこと自体が難しいテクニックなのだなーと実感します。実際、その人に払っている給料はそこまで高くありません。そんなソフトウェアが日本のインフラをしょっているという現実。本当に「読みやすく」書ける人がいたら、ここでは仕事をしていなく、海外企業やベンチャーでバリバリやってるわなと、脱金八で邪推するのであります。

「正しい、読みやすい、速い」
 会社の別部署のベテランプログラマさんが、とある講座で言っていた話。「プログラム」において一番重要な3つの要素は「正しい」「読みやすい(保守性)」「速い(性能)」であるということ。ベテランはさらに言葉を続け、「この順序が重要である。まず、正しく動作することが最重要で、次に見易いことで、最後に性能を求めよう」という。
読みにくいプログラムが出来上がってしまっていたとしたら、他の優秀なプログラマーが性能を良くしようとしても出来ません。チーム開発をする上では、やはり保守性が重要であるというお話でした。
 別のアジャイル開発の指導者的な人と話をした時に、この3ワードの話したところ、「読みやすい、正しい、早い」でしょうと。ペアプログラムをしていると、ソースコードが会話みたいなもんだから、話が通じること、つまり「読みやすさ」が一番拘るべきで、そうじゃないと正しいかどうかもわからんと仰っていました。やはり、チーム開発においては、この「読みやすい」というファクターが最重要とされているのでしょう。

美しいコードを書こうとするのは悪いプログラマー?
 Dropboxの生みの親になるYコンビネータの創業者ポール・グレアムさんは、こんな常識を全く覆す説「美しいコードを書こうとするのは悪いプログラマーだ」を唱えています。つまり、使われないサービスのソースコードがどんなに美しくても、意味が無い。それよりは、使い心地のよい性能の良いプログラムを書からないと、そもそも使ってももらえないということかと思います。この話はつまり、作り手は作って終わるマスタベーションではなくて、ちゃんと使ってもらえるサービスを作ることが重要だよと言っていると思います。こんなマーケティングの姿勢を持ち、かつプログラム書ける人が世界で通じるハッカーであると思う訳です。今後、日本もこんなマーケティングと技術を兼ね備えた人材が創出できないと世界ではやっていけないなと。フラッシュメモリを開発していた現東京大学教授の竹内健さんの著書「世界で勝負する仕事術」で読んだ、MOT(Management of Technorogy)にも話が通じるなと思いました。

3ワードを組み替えろ!
 さて、プログラムの3ワード「正しい、読みやすい、早い」の優先順位について再度考察します。
スタートアップビジネスで必要とされるのは、より魅力的なプロトタイプであるため、「正しい、早い、読みやすい」の順序、つまり保守性は低くなるということ。そして、ソフトウェアを受注する旧来型ビジネスでは、「読みやすい、正しい、早い」という順序で、保守性を大事にするということ。規模が大きくなればなるほど、後者の優先順位が望ましく、規模が小さければ前者の優先順位が望ましいということになるかと。
 これは吉野家の牛丼のキャッチフレーズ「早い、うまい、安い」が、市場動向によって「うまい、安い、早い」等、優先順位を変化させていたことに似ているかと。これは答えは一つではなく、ビジネス形態や市場動向によって「常に組み替えること」が最も重要であるということが今回の結論とさせて頂きます。

私のプログラムにコメントがいっさい書かれていないことに不満を抱いているレビュアーの方。私はスタートアップ企業だということでご了承お願い致します。

2012年4月15日日曜日

一般名処方と最低薬価

一般名処方が始まりました
4月1日より一般名処方の運用が始まりました。4月以降、病院や診療所でもらう院外処方せんには「ロキソニン」ではなく、「【般】ロキソプロフェン」という見慣れない言葉と【般】という記号が出回っていることでしょう。先発品「ロキソニン」ではなく、「ロキソプロフェン」という一般名で処方せんを記載すると、院外薬局で後発医薬品に振り替えて良いことになります。薬の一般名に【般】をくっつけて処方せんを出すだけで、処方せん1枚あたり2点の加算が算定できるため、お金を稼ぎたい診療所の先生たちは、これまで一般名と格闘していたことと思われます。
一般名処方加算は、原則として官報告示されている医薬品(先発医薬品)の中で「同一剤形・規格の後発医薬品がある先発医薬品」に対して加算がとれることとなってます(約1000件近く収載されています。)。しかし、厚生労働省から通知されている一般名の記載例は約200件程度しか記載されていません。厚生労働省としては、順次記載例を公開して少しずつ一般名を広めたいという考えのようですが、コンピュータで処方せんが印刷される時代に、一般名で印刷する「だけ」で2点取れるであれば、可能な限りゲットしたくなるのは当然です。
さて、厚労省から通知されている医薬品200件以外で一般名処方加算をゲットするためには「後発医薬品の最低薬価」が必要となります。この「最低薬価」というバズワードが、医療機関・調剤薬局の流行語大賞になっているようです。

後発医薬品の最低薬価が分からない
「最低薬価」とはなんなのか、ここで簡単に説明します。医療機関で算定できる処方せん料は、処方せんに記載される医薬品の種類数により点数が変わります。
7種類以上
40点
6種類以下
68点
種類のカウントにおいて「薬剤料に掲げる所定単位当たり(1剤1日)の薬価が205円以下の場合は、1種類とする」というルールがあります。つまり、処方せん料を正しく請求するためには、処方せんに記載した薬の価格が必要となります。一般名で記載した場合、「一般名処方を行った場合の(4)の取扱いにおいて、「種類」の計算にあたっては、該当する医薬品の薬価のうち最も低いものの薬価とみなすものとする。」ことになりました。しかしこの「後発医薬品の最低薬価」が非常に難解なのです。
先発医薬品に対する後発医薬品を調べるための一つの手段として薬価基準コード(YJコード)を使用することが想定できます。例えば、ガスター錠10mg(ファモチジン)の場合、一般名の薬価は「9.6円」になります。口腔内崩壊という口の中で溶ける薬と、一般薬がひとくくりで最低薬価を決めています。デバケン錠の場合、それぞれのグループで一般名の薬価が採用されます。徐方性(薬の溶け方が早い)があれば、別々に後発品をグルーピングするという考え方が採用されます。錠とカプセルもまとめるという考え方もあるので、単純にYJコードの9桁でグルーピングした薬価で決められないのです。きっと、このようなケースを全て調査する時間が足りなかったから、厚生労働省も「順次」提供することになったのでしょう。
なんとなく最低薬価を見つけられるように、こんな表作ってみました。Excelで見つけるよりは簡単だと思います。https://genericsearch.appspot.com/?locale=ja


時代にあった制度設計が必要
 コンピュータやプログラムは、あいまいなことが非常に苦手です。特に医療のような信頼性を要求される業界では、あいまいな制度設計が行われると、とたんに太刀打ちできなくなります。最近では電子請求が普及したため、システム化が容易な制度改定が続いていましたが、今回の「一般名処方」はちょっと準備不足であることが否めません。
 中医協の議事録では、「医師の頭の中には商品名しかないから、カルテは商品名で記載して、レセプトコンピュータで一般名を検索して処方せんを出す」という議論のようです。実際、療担規則は「カルテに一般名で記載すること」という記載にはなっていません。医師がなるべく苦労せずに、コンピュータで2点取る制度改定ということかと思われます。。。
 後発品への「変更不可」はコンピュータでの自動化が望ましくないと言いつつも、一般名を検索するところはコンピュータ任せというご都合主義。コンピュータ任せにするならば、厚生労働省は最低薬価を設定したレセプト電算マスタを公表するか、205点ルールを廃止するかどちらかが必要だったと思われる訳です。
 若干嫌な予感はしていましたが、ここまでとは。。。

2012年3月26日月曜日

デザイン思考が大事


ひどいユーザインタフェースに出会った怒り
 他人が設計したユーザインタフェースを見て思うのは、センスがある人とない人でユーザインタフェースの完成度が全く違うということです。最近みた画面で一番センスないなーと感じたのは、ワイドディスプレイ一杯にボタンやツリーが貼付けられた画面でした。多分、パワーポイントを使って設計したのでしょう。とりあえず、広がったワイドディスプレイ一杯に機能が盛り込まれています。カタログを見たら「たくさん機能があるな〜」と感じます。しかし、実際使ってみると、フルHDの右側と左側を交互に見るはめになり目線が左右に散らばるため本当に疲れます(マウスも右へ左へ行ったり来たりします)。最後にボタンを押せば、必要性を全く感じさせない確認画面が表示され、苛立ちを覚えます。さらに、デザインに統一性がないため、マニュアルなしでは何処に何の機能があるのかがさっぱりわからない始末でした。こんなユーザインタフェースでお金を取っていること自体、犯罪だと思います。どんな言い訳をしても死刑です。

ひどいユーザインタフェースが出来るまで
 こんなひどいユーザインタフェースが出来るまでの過程というのは、まさに日本企業の悪い文化が出ているなと感じます。
フルHDになった画面に対して設計した上記の例では、今までの画面設計を見直さずに、画面が広くなって空いているところにただ機能を詰め込んだだけでした。
「使える画面が広くなった」ということで全体的に設計を見直すことなく、ただ広がったところに機能を追加しただけです。
設計者は、きっと追加された画面の一部分に対して細やかに設計していましたが、全体的なユーザインタフェースについては、見直すことに躊躇したのだと思います。
全体的な見直しを行わず、今ままであった部分を直すこと無く、機能を追加したのでしょう。
設計者はきっとこう言い訳するはず。
「互換性を重視」、「上司に言われたとおり追加しました」。
まさしく、日本人特有の悪しき文化である、前例主義、部分最適、他責文化がまざまざと現れています。

ユーザインタフェースとは芸術
このGUIを設計できる技術を向上させることは、社会人になってからでは遅いというのが私の持論です。
ユーザインタフェースを作る作業は芸術品を作るものと同じです。
もちろん美意識が強くないと駄目で、さらには、ユーザ(他人)に対する洞察力、斬新的なものを作るための想像性、統一性を持たせるための論理性等、様々な能力が必要とされます。
会社員になってから、これらの能力は著しく伸ばすようなことは出来ません。
それは、才能であり、多感な時期である10代に以下に創造的な挑戦を行っていたかどうかだと私は考えます。
ですが、日本の企業はこういった人材を大事に出来ません。
こんな才能を持っている部下がいたら、上司だった扱いづらい部下に見えるでしょう。
これらの能力はお客さんを喜ばすことにはなるかも知れませんが、上司や会社に対して反抗的になりがちであり、部下として扱うにはめんどくさいものです。
日本企業でやはり必要とされるのは委員会的に調整する人であり、気難しい芸術家を大事にできないのでしょう。
最近のソニーが作るモノが面白くないのは、まさに「委員会による設計」のアンチパターンに陥っているのではと考えたりもします。

日本に必要とされるデザイン思考
今後、日本だけでなく世界的にCreator or Serverの時代が進みます。
アジアの安い労働力と日々進化するコンピュータ性能、そして満たされた生活。
その中で、ビジネスとして必要なのは高いコンセプトとデザインであると考えます。
まさにハイ・コンセプトの時代に変わりつつあるということです。
技術力はあるが、借金まみれの日本という国は、何故か対フランスでは貿易赤字になります
車やハイテクなモノを世界で売って輸出したとしても、ブランド志向の高い日本女性が、資生堂ではなくフランスの化粧品、日本製鞄ではなくプラダやディオールを買うから、イタリア・フランスに対して貿易赤字になるのです。
そう考えると、世界的な日本製ブランドがたくさん出来て、今後消費が伸びるであろうアジアで鞄・靴・化粧品を売れるようなブランドになれば、日本という国は高齢化社会を迎えてもある程度やっていける国になるのではと考えています(という考えをデフレの正体という本を読んでおもしろいなと思ったわけです)。

2012年3月25日日曜日

高額療養費の外来現物給付化

高額療養費の外来現物給付化
 2012年度4月より、高額療養費制度が入院だけでなく、外来の医療費についても現物給付化されます。従来、外来の高額療養費については、役所等でまとめて「償還払い」(後払い)されていました。つまり、役所で払ってもらうまで、患者は立て替える必要があった訳です。平成24年4月以降は、役所であらかじめ「限度額認定証」を申請・取得(※)しておけば、医療機関が患者に対して所得に応じた自己負担限度額までしか請求しなくなるため(現物給付されるため)、患者が立て替えることがなくります。
※70歳以上の場合、役所で申請すること無く現物給付の扱いになります。

70歳未満
所得区分自己負担多数該当
上位所得150,000円
+(医療費-500,000円)×1%
83,400円
一般80,100円
+(医療費-267,000円)×1%
44,400円
低所得者35,400円 24,600円

70歳以上
所得区分外来入院多数該当
現役並所得者44,400円80,100円
+(医療費-267,000円)×1%
44,400円
一般12,000円44,400円
低所得者Ⅰ8,000円24,600円
低所得者Ⅱ15,000円

高額療養費は難しい
 この高額療養費制度は、制度自体が非常に難解であり、今まで入院担当の医療事務員を苦しめていました。例えば、患者さんの請求は10円単位に四捨五入されて請求されます。そのため、5点(50円×3割=15円⇒患者請求20円)の診療があった2回あった場合、月で見たら10点だけど、患者請求は40円になります。4月以降、通常の外来でも現物給付化が始まることから、請求の端数が出まくることは想定されます。病院の窓口で10円高いだ低いだのと騒ぐクレーマーが外来窓口を困らせることでしょう。
 さらに、特定疾患等の公費があった場合には、さらに最低です。レセプトに記載する「医療の1%」の計算が変態的に難しいのです。今後、診療所のレセプトチェックでも、電卓を弾く時間が多くなることが想定できます。

高まる医科向けソフトウェアの参入障壁
 外来現物給付化が始まることで、診療所市場等で販売されている中小の電子カルテベンダーが疲弊し、撤退する会社が増えることが想定できます。もともと、大手ベンダーによる寡占状況が続いた医科向けソフトウェア市場は、他のソフトウェア市場よりお値段が高いです(中小の電子カルテベンダーが参入したことで、市場価格が若干下がりました)。特に医科のレセコンベンダーは調剤のそれに比べ、扱っているベンダー数が少ない。それは、高額療養費を含めた、医療報酬制度が調剤に比べ難解であるため、参入障壁となるからです。
診療報酬制度は医師会と厚生労働省との綱引きにより決まっています。綱引きの中で、条件が設けられ、診療報酬制度は更に複雑になります。つまり、医師会と厚生労働省が綱引きをすればするほど、医科向けソフトウェアの市場価格が高く維持される結果になるということです。

医療請求制度は社会的コストが高すぎる
 医療機関は正しく請求するために、高価なレセコンやレセプトチェックのソフトウェアを購入し、審査支払機関は独自のソフトウェアでチェックを行い、各保険者でも別にソフトウェアを作成してチェックする。診療報酬改定があるたびに、別々にソフトウェアを改造しているこの状況は、社会全体から見たら、単なるお金の無駄遣いにしか思えません。みんなが安く利用できるレセプトチェックシステムがクラウドで提供されれば、社会的コストは大幅に下げれます。そうなると審査支払機関がソフトウェアをオープンソース化して公開すれば、全体的な社会的コストは大幅に下がるのですが、審査支払機関自体の必要性が無くなってしまうため、審査支払機関はきっとしないでしょう。
 お隣の韓国では診療報酬の電子化が日本よりも圧倒的に早く進みました。それは、診療報酬制度が簡単だったからです(日本では30%減とか普通ですが、韓国では基本足し算と引き算だけです。)。逼迫する医療保険制度をなんとかするため、診療報酬制度を変えていくのはいいのですが、処方せん改定みたいな効果のないことするぐらいだったら、社会的コストを押さえるように、厚生労働省にはもう少しシンプル制度設計してもらいたいです。


2012年3月11日日曜日

一般名処方加算について


一般名処方加算
来る平成24年4月に、薬剤を一般名で記載して処方箋を発行した場合、通常の処方箋料(49点)に加え、「一般名処方加算(2点)」が算定できることとなります。この改定の狙いは、調剤薬局における在庫管理の効率化とされています。医師が処方せんに後発医薬品の銘柄を記載する従来運用の場合、調剤薬局で後発医薬品を多種に在庫として抱える必要が出てきます。この問題に対するアプローチとして、「処方箋の一般名による記載」が有効であると考えた訳です。つまり、薬剤の銘柄(製品名)を処方せんに記載するのではなく、成分を元とした「一般名」で記載することで、調剤薬局で後発医薬品を自由に処方できるようにし、後発医薬品の普及を促そうというのが狙いです。

一般名は難しい
例えば「ガスター」は「ファモチジン」という一般名があります。普通に考えれば「ガスター」が「一般」名に思われますが、学会で使用される成分名を元にした「ファモチジン」が一般名のため、処方せんに「ファモチジン」と記載したら2点(20円)分、医療費を高く請求できるということになります。そのため、24年4月以降、医療機関では「ガスター」と呼ばずに、「ファモ」等の一般名をより身近にするような薬の愛称が流行するでしょう。さらに、一般名処方加算(処方せん1枚あたり20円)欲しさに、「この薬の一般名なんやねん?」的な話題が医療機関で流行ると思います。医療機関で働く医療事務員に人たちも、必死になってこの難解な「一般名」を覚えなくてはならず、医療機関の会計窓口では少なからず混乱を招くことでしょう。

一般名加算の存在意義を問う
さて、ここまでして「一般名」を流行させる必要はあるのでしょうか?「先発品」を記載して「後発品に変更して良いよ」と一筆添える今までの方法でも、調剤薬局の在庫管理問題は十分に解決できます(後発医薬品名の銘柄が処方せんに記載されることが問題なので、先発品を記載して「変更可能」と記載すれば、調剤薬局側で自由に処方できます)。診療報酬で考えても、平成20年4月時点に点数が逆戻りしただけです。この改定は、ただただ、学会で使用されている「一般名」を普及させたいだけとしか思えなくなります。
平成20年 平成22年 平成24年
処方せん料
後発品を含む(70点)
後発品を含まない(68点)
処方せん料(68点) 処方せん料(68点)
一般名処方加算(2点)

それでも後発医薬品は普及しない
前回、後発医薬品の普及でも述べましたが、先発品と後発品は効能は同じであると厚生労働省がいくら広報しても、ブランド志向の高い日本では、ブランド品の「先発品」の需要が高いです。さらに言うと、どこの調剤薬局に行っても、国民皆保険制度により、常に70%ディスカウントされます。そんなディスカウントが効くお店でユニクロのパーカーを買う人は少ないはずで、プラダやグッチなどのブランド品を買う方がお得と考えるはずです。つまり、日本人の異常なまでのブランド志向と、充実した保険制度が存在する限り、後発医薬品は普及しないという結論になります。(本気で、後発医薬品を普及させるためには、先発品と後発医薬品を含めた平均価格で、保険請求することにし、差額分は自費請求にすると、後発医薬品が普及し、社会負担も減ると思います。)