2012年4月15日日曜日

一般名処方と最低薬価

一般名処方が始まりました
4月1日より一般名処方の運用が始まりました。4月以降、病院や診療所でもらう院外処方せんには「ロキソニン」ではなく、「【般】ロキソプロフェン」という見慣れない言葉と【般】という記号が出回っていることでしょう。先発品「ロキソニン」ではなく、「ロキソプロフェン」という一般名で処方せんを記載すると、院外薬局で後発医薬品に振り替えて良いことになります。薬の一般名に【般】をくっつけて処方せんを出すだけで、処方せん1枚あたり2点の加算が算定できるため、お金を稼ぎたい診療所の先生たちは、これまで一般名と格闘していたことと思われます。
一般名処方加算は、原則として官報告示されている医薬品(先発医薬品)の中で「同一剤形・規格の後発医薬品がある先発医薬品」に対して加算がとれることとなってます(約1000件近く収載されています。)。しかし、厚生労働省から通知されている一般名の記載例は約200件程度しか記載されていません。厚生労働省としては、順次記載例を公開して少しずつ一般名を広めたいという考えのようですが、コンピュータで処方せんが印刷される時代に、一般名で印刷する「だけ」で2点取れるであれば、可能な限りゲットしたくなるのは当然です。
さて、厚労省から通知されている医薬品200件以外で一般名処方加算をゲットするためには「後発医薬品の最低薬価」が必要となります。この「最低薬価」というバズワードが、医療機関・調剤薬局の流行語大賞になっているようです。

後発医薬品の最低薬価が分からない
「最低薬価」とはなんなのか、ここで簡単に説明します。医療機関で算定できる処方せん料は、処方せんに記載される医薬品の種類数により点数が変わります。
7種類以上
40点
6種類以下
68点
種類のカウントにおいて「薬剤料に掲げる所定単位当たり(1剤1日)の薬価が205円以下の場合は、1種類とする」というルールがあります。つまり、処方せん料を正しく請求するためには、処方せんに記載した薬の価格が必要となります。一般名で記載した場合、「一般名処方を行った場合の(4)の取扱いにおいて、「種類」の計算にあたっては、該当する医薬品の薬価のうち最も低いものの薬価とみなすものとする。」ことになりました。しかしこの「後発医薬品の最低薬価」が非常に難解なのです。
先発医薬品に対する後発医薬品を調べるための一つの手段として薬価基準コード(YJコード)を使用することが想定できます。例えば、ガスター錠10mg(ファモチジン)の場合、一般名の薬価は「9.6円」になります。口腔内崩壊という口の中で溶ける薬と、一般薬がひとくくりで最低薬価を決めています。デバケン錠の場合、それぞれのグループで一般名の薬価が採用されます。徐方性(薬の溶け方が早い)があれば、別々に後発品をグルーピングするという考え方が採用されます。錠とカプセルもまとめるという考え方もあるので、単純にYJコードの9桁でグルーピングした薬価で決められないのです。きっと、このようなケースを全て調査する時間が足りなかったから、厚生労働省も「順次」提供することになったのでしょう。
なんとなく最低薬価を見つけられるように、こんな表作ってみました。Excelで見つけるよりは簡単だと思います。https://genericsearch.appspot.com/?locale=ja


時代にあった制度設計が必要
 コンピュータやプログラムは、あいまいなことが非常に苦手です。特に医療のような信頼性を要求される業界では、あいまいな制度設計が行われると、とたんに太刀打ちできなくなります。最近では電子請求が普及したため、システム化が容易な制度改定が続いていましたが、今回の「一般名処方」はちょっと準備不足であることが否めません。
 中医協の議事録では、「医師の頭の中には商品名しかないから、カルテは商品名で記載して、レセプトコンピュータで一般名を検索して処方せんを出す」という議論のようです。実際、療担規則は「カルテに一般名で記載すること」という記載にはなっていません。医師がなるべく苦労せずに、コンピュータで2点取る制度改定ということかと思われます。。。
 後発品への「変更不可」はコンピュータでの自動化が望ましくないと言いつつも、一般名を検索するところはコンピュータ任せというご都合主義。コンピュータ任せにするならば、厚生労働省は最低薬価を設定したレセプト電算マスタを公表するか、205点ルールを廃止するかどちらかが必要だったと思われる訳です。
 若干嫌な予感はしていましたが、ここまでとは。。。