2012年10月8日月曜日

地域医療ネットワークと過疎対策





とある里の診療所
 先日、地域医療ネットワークを押し出している「とある県」の「とある町」に出張してきました。今回の出張の目的は、その地域の「かかりつけ診療所」に電子カルテを導入し、県の中核病院とカルテを共有するという、今時のお仕事でした。これにより、中核病院で行った画像診断やら検査結果を、山の中にある診療所でもリアルタイムで共有することができるため、医師不足が著しいと言われる過疎地での医療にITが貢献するという、お手本のような導入事例でした。
 さて、実際にその診療所伺ったのですが、交通の便の惨さに戦慄を覚えました。東京から新幹線でその県庁所在市に降り立った後、そこから車で約1時間30分かかるわけですが、曲がりくねる道に車酔いすることこの上なし。さらに、途中何度か1車線になってしまうため、ダンプカーが対抗して来た時には、100mほどバックして道を譲るということが何度となくありました。
 途中、山の上からみる風景は非常に美しく、仕事に来てるのか、ドライブしにきたのか分からなくなるほど。これが日本のふるさとってやつですね。まー、もう一度ドライブしたいかと言えば。。ないかなと。

過疎という実感
 車酔いで吐きそうになった状態で、作ってきたプログラムをサーバに入れて、電源を入れてみて、ちゃんと中核病院とつながることを確認して計10分。何もすることが無くなりました。ではと、診療所の周りを色々と徘徊してみたら、過疎という事実をまざまざと見せつけられました。
 ちゃんと駅はあるのですが、1時間に1〜2本の電車から降りる人が見受けられない。駅の周りでご飯を食べたのですが、お客さんは私だけ。診療所には外来患者さんが1日あたり20人ほどで、多分先生が診療所に来るためのタクシー代ぐらいしか、診療報酬は出ないかと。外来に来られた老夫婦が受付していたのですが、両方ともどうやら軽い認知症らしく、受付に手間取ること。地域の特産品がこの町の経済活動を支えているようですが、道を歩く高齢の方のスピードはかなりのろく、1日の半分以上を畑までの往復に使っているのではないかと。これをスローライフと捉えていいのだろうか?
 もう町全体から感じるのは高齢化による若者不足の実態。人口8000人程度のこの町は、1年あたり約200人ずつ減少しており(1月あたり20人程度の高齢者の方が亡くなっている。)、そして、その人口のほとんどが70歳以上の高齢者で占められているという実態があります。10年後にはこのまま行くと人口は半分以下になるでしょう。高齢化どころかもう町自体が消滅の危機に瀕していると言えます。
 そう考えると、次々と疑問がわいてくる訳です。国からの補助金によるこの遠隔医療に意味があったのか?町自体、コミュニティー自体がもう既に終末期を迎えているのではないか?幾ばくかの補助金による地域医療の拡充が、たかだか5年程度の延命措置に消えただけじゃないか?と。

過疎対策よりも見切ること
 23年度の国の税収(詳しくは税収等)は40.9兆円程度です。そして、歳出で一番を占める医療費は37兆円にまで増えています。さらに言うと、70歳以上の高齢者に対する医療費はそのうち17兆円ほどです。未だに、日本では高齢者に対する負担を増やすという選択が出来ない状況です(選挙あるし)。そのような中で、医療費を減らす取り組みとして、無駄な延命治療よりも、より自然な終末期医療と向き合うやり方が有効だと考えたりもします。
 さて、過疎地域は日本全国に蔓延しています。過疎地ではみな医師が不足していると言われますが、介護サービスも不足しています。ですが、最終的には所帯を持つ若者が介護サービスを一生の仕事にするとは思えません。そうなると、ある一定以上の経済活動がその地域に根付くことが最低限必要となるのですが、全国にある全ての過疎地域で新たな経済活動が生まれるとは到底思えません。国が補助金をいくら流したところで、地域が再生するケースというのは稀かと。やはりどこかのタイミングで、過疎末期の町に対して見切ることが重要になるのではないかと思います。より自然に町の終末期を迎えさせることが必要となるように。。。

不平等な都市開発(コンパクトシティ)
 まず、全国一律の平等な行政サービスを一刻も早く止めることが重要です。山の中の過疎地で高齢者だけのコミュニティを作るのは非常に厳しいものがあります。それよりも、湾岸部のいわゆる中核都市に高齢者を集めて生活をしてもらえる、高齢者向けコンパクトシティを作るべきです
 過疎地にある住居は、そのまま作業時の休憩地として使い、朝4時に出発する1日往復2本のバスに乗って畑を耕しに行くのです。そして、夜8時には都市の集合住宅でゆっくり温泉でも入りながら眠ってもらう方がよいかと。医療や行政サービスは都市に集中したら、町役場を田舎に立てるより全然コストが安くなります。そして、老齢の人たちがそのコミュニティの中で恋愛でもしてもらえたら、日本の消費も増えること間違いないです。

 過疎地のお客様で止まったシステムの復旧を待っている中で、この文章を書いている心境を少しは皆も考えるがいいさ。ソ○トバ○クやら、WiM○Xやら、その他ネットワーク会社、もう少し過疎地で無線を張れ、マジで。