2012年1月17日火曜日

後発医薬品、処方箋様式改定、プラセボ効果



後発医薬品の普及について
 2012年度の診療報酬改定では、社会保障費の赤字が慢性的に膨らむ中、診療報酬を1.38%上げて、その分薬価を1.38%下げて全体でトントンにするとの方針「平成24年度診療報酬改定について」を中医協が出しています。中医協や厚生労働省が薬価の引き下げに期待しているのが、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の推進です。
 2012年度の診療報酬改定においても、処方箋の書式を変更して、後発医薬品を推進させようという施策「後発医薬品の使用促進のための環境整備の骨子」が議論されているようです。後発医薬品の普及に関して処方箋の様式が変更されたのは、2006年度の診療報酬改定の「後発医薬品への変更可」の欄の新設が初めてでした。これは後発医薬品に変更しても良い場合、新設の欄に医師名を印字することで、調剤側が後発医薬品に変更しても構わないという制度です。しかし、そもそも署名しない医師が多く、あまり効果が出なかったと言われています。その後、2008年度に、「後発医薬品への変更不可」の欄に変更されます。これは、意味を逆転させて、「医師名が署名されない場合に」後発医薬品への振り替るという制度改定でした。しかし、この制度改定も「後発医薬品への変更不可」がプレ印刷された処方箋で発行される等の抜け道があったようです。そして今回、薬剤単位に「変更不可」を指定する書式に変更して、プレ印刷問題を解決しようという目論見と思われます。

処方箋の様式を変えても後発医薬品は普及しない
しかし、処方箋の様式を変えようが後発医薬品が普及に影響が出ないということに、中医協にはもうそろそろ気づいてほしいです。そもそも、現在、院外処方箋のほとんどはオーダリングやレセコン等のコンピュータから印刷されています。いかに、「後発医薬品への変更」を促すような処方箋の様式だったとしても、医師が簡単な操作で「後発医薬品に変更不可」にしてしまう機能が開発されてしまう訳ですから、処方箋の様式を変更して後発医薬品を推進させるという施策自体がナンセンスなのです。さらに、処方箋の様式を変更した場合、それぞれの医療機関でシステム修正や、プレ印刷紙の購入等、莫大なコストがかかります。これでは、システム業者や、印刷業者が儲かるだけです。中医協には「後発医薬品の品質確保」等の正攻法に注力してもらいたいです。

プラセボ効果と後発医薬品
 後発医薬品は生物学的な試験により生物学的に同等効能であることが証明されていますが、安い後発医薬品よりも先発品の需要が高いのが現状です。その理由として、「プラセボ効果」が挙げられます。「プラセボ効果」については、行動経済学の学者が書いた「予想どおり不合理」を読むと良く分かります。本書では、2ドルのアスピリンの方が、1ドルのアスピリンより、良く効くという「プラセボ効果」の事例について説明しています。つまり、効く薬が高価なのではなく、高価な薬ほど良く効いてしまうということです。つまり「プラセボ効果」を考慮した場合、後発医薬品を推進すると、逆に投与量が増えて、社会保障費が上がってしまうかもしれないということになります。「予想どおり不合理」では他にも、スターバックスのコーヒーがおいしい理由、レストランでべらぼうに高いメニューがあると客の単価が上がる等々、面白い事例がたくさん載っている本なので、超お勧めです。

プラセボ効果で患者負担を考える
 うつ病等の場合、後発医薬品よりも先発品の方が良く効くようで、先発品の採用が高かったそうです。しかし、2006年度に施行された自立支援法で1割の患者負担に引き下がってしまってるので、「プラセボ効果」自体が効かなくなってしまいます。今年度の改定では、外来の高額療養費を現物給付化するとのことで、「プラセボ効果」で考えると、患者の負担額が低く見えてしまうので、治りにくくなるということになります。極論、外来の患者負担については、若者・老人問わず3割負担に設定し、高額療養費と公費は全て償還払いにした方が、プラセボ効果で病気が治りやすくなり、医療費削減に繋がるのではと考えるわけです。

2012年1月4日水曜日

緊張と緩和

お笑いの緊張と緩和
 この緊張と緩和という言葉は最近テレビでもよく耳にするキーワードでありますが、もともとは関西落語の桂枝雀さんが、「全ての噺は緊張と緩和で分類できる」という主張が最初とのこと。この「緊張」と「緩和」理論について、落語の世界を通して説明している動画がyoutubeに掲載されていたので、じっくりと見てしまいました。
 近年のお笑いは、いかに「緩和」させるかではなく、いかに上質の「緊張」を演出できるかだと思います。例えば、大晦日に放送された「笑ってはいけない」等の番組では、シュールレアリズムによる緊張と「アウト〜」による緩和と考えれば、まさにあの「緊張」の間が重要なのではないかと考える訳です。また、M1グランプリを振り返ってみても、徹底した変態キャラのチュートリアルや、徐々に盛り上がる喧嘩のブラックマヨネーズ等のコンビは「緊張」できる「場」を上手く演出しているな〜と改めて考えさせられます。桂枝雀さんは1997年にお亡くなりになられてますが、「緊張」と「緩和」は、お笑いの現場に最も取り入れられている理論だなぁと感心します。

音楽の緊張と緩和
 緊張と緩和の動画を見た上でiphoneの曲を聴いていたら、ヘビーローテーョンされる曲のほとんどが、緊張と緩和のダイナミズムがしっかり構成されている曲ばかりであることに気づきました。

例えば、ライブ曲での終盤のジャムセッションがラストのコーラスに向けて盛り上げる曲は何度聴いても脳内アドレナリンが分泌されます。最も重要なのは、ジャムセッションの質が高く、間延びしない程度の「緊張」を演出しているかだと思います。


レッチリのBy the wayなんかは、ライブじゃなくても曲自体が緊張と緩和で構成されてるため、ダイナミズムがあって、チャートインもなるほどなと感じます。

高校の時に流行ったダンスミュージックもやはり、ドラムが一定間隔で鼓動する「緊張」と、休憩時間?的な「緩和」がしっかりと構成されている曲だったなと思い出しました。

創出の緊張と緩和
古来中国の諺で、「良い考えは馬上、枕上、厠上で生まれる」と言われるそうで、ブレークスルーはリラックスされた「緩和」の中で生まれるとのこと。なるほど、私の仕事のソフトウェア開発でも、長時間かけて作ったものが全て必要なくなるくらいのアイデアは、家に帰ってお風呂に入った時に生まれたりすることが多い。様々な切り口で物事を捉えようと努めても、やはり緊張している状況では、視野が狭くなっているのでしょう。では、ずっと緩和(リラックス)すればいいのかというとそうでもない。本当に質の高いブレークスルーが生まれるためには、突き詰めて物事を考える緊張や、悪戦苦闘して実行する緊張が、過程に必要なのです。緩和しきった中での「軽い」アイデアを聴いても、聴いている人は魅力を感じないものです。

プロジェクト活動の緊張と緩和
良い作品をプロジェクトで成果を出すには、緊張と緩和のダイナミズムをチーム全体で形成する必要がある。各メンバーがそれぞれ持つ「緊張」と「緩和」の波長が、チーム全体で大きな波長になり、それは共振作用を起こし、信じられない程のパワーが生み出される場合がある。まさに「狂熱」である。このようなプロジェクトにするためには、各メンバーの波長を検知し、マネージャ自身の波長を乗せながら、チーム全体の波長に化けさせるマネジメントが必要だ。つまり、プロジェクトマネージャの目指すべき仕事とは、Excelでガントチャートを書いて報告することではないということだ。
このような考えは一般的なソフトウェア開発のPMとは異なる考えなので、私はPMにはなりたくないというのが結論。今年の春の情報処理試験は何も受けません!