2011年8月14日日曜日

電子立国日本の自叙伝



  10年前くらいに放送されていたNHKスペシャル「電子立国日本の自叙伝」を最近NHKオンデマンドで見る機会があったのですが、その内容が非常に面白かったのでご紹介。

  1960年代後半、当時コンピュータといえば、机と同じくらいのサイズが当たり前の状況。日本では「そろばん」という文化があり、世界でも珍しく卓上計算機のニーズが高く、当時の複数の日本大手電機が電卓開発にこぞって乗り出すこととなり、そして日本国内で「電卓競争」が始まる。「電卓競争」が激化する中、計算装置や半導体装置の小型化が進む。そして世界最初のLSIを搭載した小型計算機を「ビジコン」が開発する。だが、厳しい競争に耐えきれず「ビジコン」は倒産。当時「ビジコン」とLSIを共同開発していたIntelが、「ビジコン」から独占販売権と基本特許をそのまま買い取り、Intelが世界No.1の半導体企業として誕生することとなる。

  大学在学中、当時授業を教えてくれていた教授が番組の編集に協力していたことから、この番組を授業で流していたのを思い出す。世界の覇権を握るくらいのイノベーションを簡単に海外に流出させてしまう、当時の経産省を批判していたような思い出があります。Intelの覇権が現在に至っても続いていることを考えると、とんでもない確かにトンでもないことです。

 さて、最近は、原発の事故もあったため、自然エネルギーやスマートグリッドが注目されていますが、それらを実現するための最重要技術が電池・バッテリーと技術となります。一昔前は、そのほとんどが日本メーカで提供されていましたが、これがもう昔の話。今は韓国が1位で2位も中国に奪われています。日本の大手メーカは、バッテリー産業を21世紀版「産業の米」と捉え、いち早く研究開発費を投入し、また、ハイブリット車などの需要もあったため、バッテリーでは世界のトップを走り続けていました。それが21世紀に入ると、サムスンがメモリや液晶でやってきたやり方と同じ手法でバッテリー産業に参入してきています。つまり、日本の研究者を高額な報酬で引き抜きを行うアノ手法です。ちなみに、5年ほど働くだけで、日本での一生分の給料となるそうですから、引き抜かれた日本人を非難できないです。

 本来、バッテリー技術者の流出を止めるためには、まず、特定の研究者の給料をあげる等の優遇を行う必要があるわけですが、そんなことは日本企業では難しいのが現実のようです。ちなみにこの話は、私が勤める会社の元副社長がブログで書いていた内容です。元副社長は「日本は妬みの文化なので、このような格差を生むと会社がバッシングを受けるだろう」のようなことを書いてました。なるほど、確かに今のマスコミの報道を見る限りだと、そのように思います。

 「技術立国」だと言われている日本ですが、2つの事例を見返す限り、「技術」を簡単に手放しすぎていると思うわけです。せっかく生まれたイノベーションを上手にオペレーションできないところが日本ってことなんでしょうね。

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