2012年2月26日日曜日

ニーズをシーズでウォンツに!


ビジネスモデルって何やねん?
5、6年前くらい前に、会社でビジネスモデル特許を書けという至極あいまいな業務命令が私に下りました。技術特許については、それまでにも何件か出願依頼していましたので、十分理解していましたが、「ビジネスモデル特許」については、一種の「ハイパーメディア」なにがし的な胡散臭さが感じられていたため、意識的に避けていました。が、「ハイパービジネスモデルは胡散臭いのでちょっと。。」なんて、サラリーマンとして上司に対して言えないため、教育嫌いな私ですが、「ビジネスモデル」関連の社内教育を探し出して、理解を深めようとした訳です。
さて、その「ビジネスモデルなにがし」の社内教育に出向いてみると、片手に携帯よろしくノートパソコンに向かっている「チョイワル」な壮年男性が講師の席に座っておられました。周りの受講生は、その「チョイワル」講師をまるで有名人を伺うかのように、興味津々に見つめていたので、自分がえらく場違いな場所に来てしまったと後悔していたのを覚えています。講義を進めて行くと、著作「コンサルタントの質問力」の紹介がありました。その方がコンサルタント業界では有名な野口吉昭さんであることが初めて分かりました。

ニーズとシーズでウォンツを!
講義の内容は当初期待していた「ビジネスモデル特許」とは全く関係がないものでしたが、オフィス用品販売「アスクル」や、大田区を中心にお弁当を販売している「玉子屋」等を事例に、様々な業態でのビジネスモデルを分析するという、知的欲求を満たすとても有意義な講義内容でした。特に私が感銘を受けたのは、「新たなビジネスモデルを創出する過程において、ニーズとシーズでウォンツすることが必要」という話です。
ニーズはいわゆるお客さんの声。具体的ではあるが、視野が狭く、短絡的な内容が多いです。それは決して本当に欲しいモノ、いわゆる「ウォンツ」ではない。スティーブ・ジョブスは「客は本当に欲しいものを知らない」と言っていたとか。だけど、お客の誰もが知らない「ウォンツ」を創り出すなんて、簡単には出来ない。でも、社内のどこかにあるシーズ(技術)を最大限に活用すれば、「ニーズ」を「ウォンツ」に変えることが出来るという話でした。

iPhoneが出来上がるまで
スティーブ・ジョブス」でiPhoneが世界中で圧倒的な驚きを持ってリリースするまでの話を読んだとき、まさに「ニーズをシーズでウォンツに!」のケースに全く以て当てはまるなと感心しました。iPodが世の中を席巻していた頃、iPodを脅かすのはウォークマンではなく携帯電話であるとAppleは考えていました。デジタルカメラがカメラ付き携帯電話の登場により販売が落ち込む様を見ていたので、危機感を強く持っていたのでしょう。さて、AppleはMotorolaと共同でIPod付き携帯電話を開発し販売しました。しかし、これは大失敗に終わりました。携帯にiPodが内蔵した、「ニーズ」をそのまま具現化した「だけ」の製品だったからです。特にデザインがしょぼかったらしく、「スティーブ・ジョブス」の本の中でも糞味噌にこき下ろしていました。
ここで、Appleは既に開発を進めていたタブレット技術に目を付けます(iPhoneより先に、iPadを開発しようとしていたというのが面白い)。このマルチタッチ機能を「シーズ」として組み合わせ、徹底的にブラッシュアップを重ねた結果、まさにお客の誰もが想像もつかないようなiPhoneという「ウォンツ」が創造された訳です。

「現場」はフィールドだけじゃない
さて、私の仕事はソフトウェア開発なので、それに立ち戻って話をします。日本のソフトウェア業界に働いている人は必ずこの言葉を聴いたことがあると思います。「お客様の現場に出向いてお客の話を良く聞け!」。この言葉は半分は正しいですが、半分は間違いです。お客さんが欲しいモノを提供するためには、お客さんの現場に出向いて「ニーズ」を聞くことは重要ですが、それだけでは本当にウォンツなモノは作れない。「シーズ」は常に開発現場に落ちている訳で、開発現場にも同じように、いや、それ以上に出向かないと、本当に売れるウォンツな商品は出来上がらないと思う訳です。これから日本ではモノを作ったら当たり前のように売れるという時代じゃありません。客を感動させ、ワクワクさせる「ウォンツ」なモノを作るためには、やはり「ニーズ」と「シーズ」を繰り返し組み合わせながら、新たな「ウォンツ」を作り上げる思考パターンが必要とされるのでしょう。

この話は今週の重役向けスピーチのネタです。当初は(http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/25610490.html)を元にアレンジして、「ソフトウェア業界における少子化問題を考える」を用意したのですが、「無駄に炎上させてもしょうがないだろう」という上司判断により、今回の話のネタを日曜夕方に書き下している訳です。上司の命令を従順に従う私こそサラリーマンエンジニア。

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